夢買イ

六区の片隅に「夢買イマス」という小さな看板を出した骨董屋がある。店には黒眼鏡の主と店員らしい西洋人形のような少女がおり、店主はヒトから夢を買い、それを売る。 夢はグラスマーブル(ビー玉)の形状をしており、多色の細い線の現れ方によって分類され、美しい夢や希少なものは好事家たちに高額で売れる。夢のナカミの再生も可能だが基本的に曖昧で断片的なものであることが多く、むしろ解放時に麻薬と同じ効能を併せ持つので専らそれ用か、美しく繊細な螺旋を持つ芸術品として鑑賞用に売買される(使用者に死者が出たことも多々ある)。
夢を売った者は二度と夢を視ることはなく、眠りの底にはただ無の闇が広がるという。夢を売った者は一様に精神を病んだり体を壊したりして早死にするという都市伝説がある。

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