ヨルガ朗読会「睡晶幻燈夜会」満員御礼

お客様各位

此の度の『睡晶幻燈夜会』に於きましては、皆様方御多忙中にも関わらず、会場となりました浅草橋パラボリカ・ビスへお越し頂きまして、厚く御礼申し上げます。おかげさまで満席を賜り、また好評のうちに閉会する事が出来ました。

此の度の夜会で、皆様に直接御会い出来、また御話出来たことに関係者一同喜びを感じております。

最後になりますが、当夜会の成功に感謝し、満席でご来場頂けなかった皆様方にもその一部を垣間見て頂きたく、朗読されました作品のひとつ『兄様の指輪』を「ヨルガ文庫」コーナーに文章にて公開致しました。御一読下されば有り難く存じます。

御来場、誠に有り難う御座いました。 弘田佳孝

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「睡晶幻燈夜会」

演目<プログラム>

・序曲:弘田佳孝

・朗読会

一、『兄様の指輪』  のばらひな著

――兄様は何時、気が付かれたのでしょうか。私が、兄様の外套のポケットにあった指輪を盗んだことに。
理由も言わず家を出た兄が残した指輪に纏わる過去と、夜毎に視せる夢と幻想が織り成す小編。

朗読 みとせ のりこ
音響 弘田 佳孝
監修 のばら ひな

おしまいの曲「夢ヲ買イマス」

ニ、『シュガープラム、コンフェイト』  みとせのりこ著

その日は朝からなんとなく不思議な日だった。朝起きて、外に出たときから、いつもより大気が綺羅々々と偏光して視えるような、シャツの袖を過ぎる風の手触りもどことなく違うような、そんな気がする日だった。
ポストマンの少年が視たある日の風景と、差出人のない「手紙」たちの物語。

朗読 みとせ のりこ
音響 弘田 佳孝
監修 弘田 佳孝

・小演奏会

三、『小さい秋に寄せる三葉の詞、或いは泡沫の夢』

1.ヨルガ<睡晶>
2.小さい秋みつけた
3.珠ノ舟
En.狐―キツネツキー月

唄い手:みとせのりこ
ベース:弘田佳孝
ギター:太田光宏

※終演後、夜会参加者の中からお二方に今回の短編二編に因んだお品をプレゼント致しました。

ひとつは『兄様の指輪』のモチーフになったリング。Silver925製。ロケットになっていて、蓋が開きます。「ポイゾンリング」という名前で売られている曰くありげなシロモノです。

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もうひとつは『シュガープラム、コンフェイト』の、ポストマンの少年が配達している手紙=薄荷の香りがする擬似結晶、通称「グラス」。作中に登場した三つ星マークの舶来燐寸の箱に入れて。

ヨルガ朗読会+ミニライヴ「睡晶幻燈夜会」チケット予約満了いたしました

10月10日、パラボリカ・ビスにて行われる、ヨルガ朗読会+ミニライヴ「睡晶幻燈夜会」チケット予約が満了いたしました

多数のご予約、誠にありがとうございました。

当日券はございませんので、ご了承くださいませ。

※入場は整理番号順です。
※整理番号の付与順は、パラボリカ・ビスにてチケットを引き換えた順番になります。チケットの引き換えは10月8日より会場にて。ギャラリーの入場チケットも兼ねておりますので、早めに着いた方はギャラリーやカフェも是非楽しんで下さい。

ヨルガ朗読会+ミニライヴ「睡晶幻燈夜会」

ヨルガ朗読会+ミニライヴ「睡晶幻燈夜会」

ヨルガ朗読会+ミニライヴ「睡晶幻燈夜会」

出演:
みとせのりこ(唄、朗読)
弘田佳孝(Bass、音響)
ゲスト:
太田光宏(Guitar)

とき: 2010年10月10日(日曜) open /19:00 start/19:30
ところ: parabolica- bis[パラボリカ・ビス]
東京都台東区柳橋2-18-11 TEL : 03・5835・1180

Ticket

前売り\2500 当日\3000
※定員50名(全席着席、指定ナシ)

予約・お問い合せ:パラボリカ・ビス(会期中は水曜休館)
tel:03・5835・1180
メールでのご予約はこちらから

※ご予約は先着順50名様までで締め切られます。
※入場は整理番号順です。
※整理番号の付与順は、パラボリカ・ビスにてチケットを引き換えた順番になります。チケットの引き換えは10月8日より会場にて。ギャラリーの入場チケットも兼ねておりますので、早めに着いた方はギャラリーやカフェも是非楽しんで下さい。

【ヨルガ通信】ヨルガ文庫「或る遊女の話」 WEBラジオ朗読


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朗読:みとせのりこ
音:弘田佳孝

*
「或る遊女の話」

わっちの生まれた里は、海と山とに挟まれた猫の額のような狭い村で、おまけに土地の痩せた貧しい寒いくにでありんした。わっちの家はそんな村の中でもまァまた貧しくて、上に姉が一人、わっちの下には弟が二人おりんしたが、下の弟は水害による飢饉のときに死んでしまいんした。わっちがその折十にひとっつ足らなくて、父(てて)親は外へ働きに出たっきり帰らず、もう3年は経っておりんしたねえ。いちばん上の姉と母とで他家(よそ)様の仕事を手伝って、それでもらった糧で細々と家族5人、空き腹寄せ合って兎小屋のような家にしがみつくように暮らす毎日でおざりいした。
わっちは母に似たおかげでこォんな田舎くさい顔貌ですけど、姉はわっちと全然似ていなくて、ほんとに美しい人でございましてねえ…え?おまえさんが田舎くさいというなら、姉御様は天女のような人だったろうって?真にお上手でおざりいすなあ、主様は。そう、でも姉は真に、つぎあてだらけの木綿の着物を着ていても、何というのでしょうね、凛として清しい美しさのある…姉でありんすか?今?
姉はもうこの世にはありいせん。カジンハクメイ?どこのおくにの言葉でありんすか?へえ、綺麗な人は儚く早死にするもの、ねえ…さすがものかきの先生はいろんなことご存知でおざりいすなあ。でも、姉は亡くなった…というのも違うような、どう申せばいいんでしょうねえ。

そう、姉は。
水神様に嫁いだのでございますよ。

*
ひどい水害の年でございました。頃は秋も終わりでしたか、空は荒れ、海波は猛り、畑にも出られぬ、猟にも出られぬ、舟で海にも出られぬ中で、山土は水を含んで崩れ、海からは波の壁が時折押し寄せる。山と海とに挟まれた痩せた貧しい小さな村、そんな日々に長く耐えられようはずがありません。人は餓え、水に土に脚をとられてずいぶん亡くなりました。
それでも一向止まぬ水の猛威に、これは水神様のお怒りかとみんな怯えましてね、それで、まァ、神様のお怒りを鎮めるために誰か遣わそうと、そういう話にね、自然なりました。誰を水神様へ遣るのかと、そういう話を大人たちがしているときに、あたしの家の前の椿の木に、時ならぬ紅い花が咲きました。それを見た大人たちは、これは水神様の与えた徴だとそう言いましてね、正直理由なんて何でもよかったんでしょうねぇ、ただうちは貧しくて里の家々に仕事もらっておこぼれで暮らしていたようなもんですから、そう言われちゃァ逆らいようもありません。うちから遣いを出すことに決まりました。

そして雨の泥濘の中、夜の足元も覚束ぬというのに、家には急ぎ村長と土地神様を祀る社の宮司がやって参りました。狭い家の上座に姉を座らせて、長に宮司、母と、日ごろならありえぬ下座から囲んで姉を見上げております。
最早一刻の猶予もならぬ、心を決めてくれぬかと、重苦しいような、それでいて急かすような調子の声が聞こえます。おまえの母や妹弟のことは、末まで村で助けてゆくで心配するでない、とそのように村長が申しますのを、あたしは土間の戸口の筵の陰で息を潜め、そっと聞き耳立てておりました。

実はその折、姉には不釣合いな縁談が持ち込まれておりました。母と姉ふたりしてよく届け物をしておりました隣里の富裕な家から、姉を迎えたいと言われていたのでございます。縁談といっても内々のもの、要するに姉は妾に望まれたのでございますよ。相手は五十に手の届く歳の男でございましたが、母はそれでもこの貧しい里で暮らすよりは、ましてや生贄になるよりはと思ったのでございましょう、姉に必死に縁談の方を勧めたのでございますが、姉は何故か杳として首を縦には振りませんでした。

大人三人下座に置いて、脚を正したまま姉は黙って端座しておりましたが、大人たちの話が途切れると一間を空けて口を開きました。
「富裕な里の資産ある家、その殿方に嫁ぐといっても、それは結局身売りをせよと言うのでございましょう。その家その里の富、そして人の情など、我が身でいつまで購えるものか、末の量れぬ不確かなものでございます。」
「ならばわたしは今この里に威をもて居わす水神様の元へ嫁ぎとうございます。同じ身を売るならばヒトよりも、神にこの身を捧げましょう。その方が村のためにも、親妹弟のためにもなるのではありますまいか。」
姉は水鏡のような声でそう言うと、両の指を膝の前に揃え、静かに頭を垂れました。

「わたくしを、どうぞ水神様の元へお遣りになって下さいまし。」

よう言うてくれたと、村長の爺は感じ入った様子でそう言って、傍らの母にまこと孝行な娘ぞと大きく声をかけました。母はただ俯いて姉の前に手をつき深く、深く頭を下げました。筵の陰から盗み視た母のその肩は震えていましたが、姉は毅然と顔を上げたまま、何を視ているものか全くわかりませんでした。村長を送り出しに母が立ち、姉もそれに続き、あたしは慌てて戸口から退きました。とはいっても小さな小屋、退いたところで他のどこへゆくような部屋もありません。母はただ顔を伏せ息を詰めて長の背に続いておりましたが、姉だけは戸口の横で所在無く佇んでいるあたしに気づきました。姉はあたしをみとめると、あたしの方へ手を伸ばし、笑いかけるようなそぶりをみせました。
「--ちゃん、堪忍ね。」
笑うでもなく泣くでもなく形容のし難い顔をして、そう言いながら姉があたしの髪を撫でたときの、その黒い目の不思議な光を、あたしは生涯忘れることは出来ないでしょう。

そうと決まれば支度は鞠の石段を転がるように進んでゆきました。あまりの手速さにあたしは右往左往するばかり、姉は多くの人に取り囲まれて、我が家の者は蚊帳の外に置かれたように少し離れてそれを見ているしかありませんでした。
あたしは愈々姉が禊に、着替えに向かうと家を発つ段になってもどう声を掛けていいかわからず、おろおろと後ろをついて歩き出しましたが、ふと見遣った窓の外、目についたただ一輪の紅い花、思わずその木の元へ雨の中走り寄り、細い枝を手折ると、姉の背を追ってそれを差し出しました。姉は振り返ってずぶ濡れのあたしの手からその花枝を受け取ると、黙ってにこりと微笑みました。
それが間近で見た姉の最後の顔でございました。

*
そうやってあたしの姉は、十と五つで白絹の花嫁衣裳に包まれ、瑠璃翡翠で飾り立てられた小さな舟に乗せられて、水に流されていきました。あれほど荒れ狂って里を悩ませた荒天が、姉の祝言の夜だけは嘘のように凪いで、夜空にはまるで天人の宝珠の箱を覆したような、満天の星が煌いておりました。水辺に点した篝火の間を縫って、宮司に手をとられ、筵の道を小さな舟まで歩む姉の姿を、あたしは今でも今日のことのように思い出せます。

それはそれは美しい、この世のものとは思われぬ程美しい花嫁姿でございました。この里のどこにこのような贅沢な衣があったものか、真新しい綸子の紋意匠に紅絹裏つけた三尺の長い長い袖振りからは、やはり絹の襦袢が零れておりました。帯の胸元に差した懐剣には白と赤の長い房が揺れ、ふき綿も豊かな重い裾引いて、淡く紅を刷いた白皙の貌に黒髪結った、あたしの姉はまるで水晶か真珠<しらたま>の雫のように、恐ろしいほど静謐に佇んでおりました。嗚呼もう姉はヒトではなくて水神様の伴侶、神の眷属なのだと、あたしは幼い心に遠く誇らしく、そして淋しく姉を感じたのでございました。

けれどどんなに飾り立てても所詮は捨小舟。死出の道行きでございます。
あたしはその舟の、煌びやかなる珠の光、花を模った燈籠の灯りの最後のひとつが遠く波間へ消えるのを見て、初めてそのことに気づいたんでございます。周りを見れば村の人たちは、有り難い有り難いと手を合わせ感謝したその口元にその頬に、自分は難を免れた、そんな安堵を貼り付けていたのでございます。そう、母ですらも深い悲しみといたたまれぬほどの詫びの影に、そのような色をごく僅か、浮かべていたように見えました。
あたしは急に恐ろしくなって、下の弟の手を強く握りました。何にもわからない顔した弟が、「ねえちゃん、いつ帰ってくるの」とあたしに問うのを聴きまして、あたしは子供心に涙を流さぬよう必死で堪えながら、ただ弟の頭を撫でたのでございました。

*
まァ、そんなこともありんしてね。
いろんなことが厭になって、わっちは自分でここへ売られてきたんでおざります。

母は翌年体を壊して帰らぬ人になっちまって、あたしと弟は村を救った生き神様の身内ということで無碍にもできなかったんでしょう、村の家に交代で世話になって育ててもらってはおりんしたけど、なんとも肩身の狭いものでおざりいした。
弟には画の才能が見えんしたので、絵の師匠の元へ弟子入りさせようと思いましてね、それには何かと物要りでおざりましょう、それで。
ここ、吉原に。

ああ、せいせいしいした。わっちにはしょっぱい里の暮らしより、ここ帝都の、花街の暮らしが肌にあっておりんす。同じ籠なら自分の選んだ籠の方が、居心地がいいというものでおざりましょう。

え?
何故そのときわっちが選ばれなかったか?
それはそのときわっちがまだ娘ではなく、子供だったからでありんすよ。
水神様もそんなことで選好みなさるあたり、男のおひとでおざりぃすなあ。

あら、その通りだと仰せになる。主様はずいぶん正直なお方でありんすなあ。
さあさ、話ばかりも野暮というものでおざりましょう。まずはゆるりと一服しなんして。
今度会ったら続きを聞かせて欲しいと? ふふ、さァて、今度話すときァ弟が妹になったり、お里が南のくにになったりするかもしれませんえ。

その話も是非聞きたい?
真に変わったお客さんだこと。主様は人好しでありんすなあ。…でも。

「わっちはそういうお方が、大好きでありんすよ。」

【楽曲解説】12_ヨルガ

このアルバムの中で一番最初に原型ができあがっていた曲。ヨルガ、睡晶という、帝都を支えるエネルギー源といわれるこの鉱石、通常のエネルギー保存の法則を無視するほどの力を秘めた「睡晶」とは、一体何の結晶なのか。1曲目の「セカイは僕の睛の中の映画」が帝都の地上や風景を描いた表テーマだとすれば、この「ヨルガ」は地下、深い鉱脈と形而上的な何か、世界の裏面をあらわすグランドテーマと言えるでしょう。採掘後の地下坑路に水が滴るような深いリバーブとみとせのりこの声質をそのまま活かした硬質なヴォーカル、世界の深淵にまさしくスイショウのように響く曲です。(みとせ)

どんなプロジェクトにおいても、最初に作る曲というのはその後に作る曲の流れを決めてしまうことがあるので、とても気を使うものですが、今作はみとせさんの歌声という揺るぎない大きな存在がありましたので、まずは声を存分に生かしたメロディを、そして既に明確だった世界観の中で、ヨルガという鉱石に相応しい曲を、ということで、漠然と作り始めるのではなく、明確なイメージで作り始めることが出来ました。ピアノとハープによるアルペジオ(分散和音)とその残響音が、睡晶の鉱脈を映し出します。(弘田)

【楽曲解説】11_U.M.T.(inst.)

インストの2曲についてはコンセプトだけは先に聞いていて(唄録り後の一杯を飲みながら…ただ飲んでるだけじゃなくてちゃんと打ち合わせも兼ねてるんですよ!!)、その際タイトルについて相談を受けたので、こんなのはどうだろう、という案を出しましたが、コーラスも入っていないこの曲についてはわたしは基本ノータッチ、弘田さんにお任せでした。もう1曲のインスト「curclation」はわたしの案ですが、この「U.M.T.」という暗号めいたタイトルは弘田さんがつけたもの。それぞれの文字が何の略なのかを考えると、ヨルガというものの本質が見えてくる、そんな気がします。(みとせ)

収録曲の中で一番最後に作った曲です。最初に作った「ヨルガ<睡晶>」のモチーフを使ったアレンジなのですが、ヨルガという鉱石のイメージを、短いながらも凝縮した曲が出来たかなと思っています。ピアノとハープにベースのハーモニクスが重なるシンプルな編成の曲。ハーモニクスとは、振動する弦の特定箇所に軽く触れて基音と幾つかの倍音を抑制する奏法です。チューニングする時などに使われますが、この曲のように音階を奏でることも可能です。(弘田)

【楽曲解説】10_狐-キツネツキ-月

京都は伏見の出身の弘田さんが伏見稲荷が魂の故郷と仰るので、じゃあキツネの曲を入れましょう、と、ただ「キツネ」というキーワードだけを渡して書いてもらった曲です。跳ねるような曲調にトリッキーな部分変拍子、このパートはこんなイメージ、とメモを書き留めながら聴いて、後からそのメモを詞に起こそうと思ったら、起こす必要がないくらい譜割も展開もほとんどぴったり嵌っていました。うーん、おキツネさまの怪。弘田さんのベースと壷井さんのヴァイオリンの掛け合いや、みとせと弘田さんのコーラスなど、生っぽい聴き所も満載。ちなみにタイトル、右から読んでも左から読んでもキツネツキでございます。(みとせ)

幼少の記憶を思い起こしつつ、わずか二時間ほどで出来上がった曲です。子供の頃は毎日のように、稲荷山に登って遊んでいました。稲荷大社の周りは商店が多く普通の町なのですが、表参道の大鳥居をくぐり、本殿のある境内を抜けると、そこは幽玄で幻想的な朱の世界。千本鳥居をくぐり、くねくね道を行くと、三ツ辻、四ツ辻、どんどん人気(ひとけ)の無い山の奥に入って行きます。たまにわら人形などが落ちていて怖い思いもしましたが、山の中腹から京都の町を見下ろす景色は絶景です。むば玉の くらき闇路に 迷ふなり われにかさなむ 三つのともしび、という後醍醐天皇の有名な歌碑などがあります。なんか楽曲解説じゃなくて、観光案内になってしまいましたね。(弘田)

【楽曲解説】09_天上への祈り

みとせといえばこういう賛美歌系のイメージをお持ちの方もおいでと思います、まさしくみとせのりこの薄造り(笑)みたいな曲です。歌詞にも賛美歌的な言い回しがぽつぽつ入ってはいるのですが、基本多神教の日本、かつ科学によってそれらの感覚が麻痺した現代人、或いは様々な挫折や不運によって信仰を叩き折られた者にとって、神というのは目に見えない何か大きな力、でしかないのだろうと思います。ただそれでもやはり人は祈る。いるとも知れぬ神に、誰とも知れぬ神に。裏切られても傷ついても、目の前で泣いている悲しんでいる傷ついている人がいれば、どうかこの世界に棲む者たちが安らかであるようにと、そう祈らずにはおられないのです。(みとせ)

「祈り」は、国家、特定の宗教、無宗教の価値観念に関わらず、人間の根源的な欲求に基づいた普遍的な行動です。古代から、また未来永劫、人類は様々な思いを祈り続ける事でしょう。そういう意味では、ヨルガ世界における「祈り」も、我々の住む世界の「祈り」も根源的には同質のものであるかと思います。この曲の仄暗く荘厳な和声と旋律を、みとせさんは見事なまでに美しく歌い上げて下さいました。冒頭の鐘の音はチベットシンバルによるものです。(弘田)

【楽曲解説】08_眠り病

意外な曲に化けちゃったシリーズ(笑)その2。当初は静かで眠りを誘うような浮遊感がありつつ、でもどこか不安定で毒を秘めた曲、というイメージで考えていたのですが、上がってきた曲はまさしく「弘田節全開」。自分のイメージを一旦捨てて楽曲にシンクロした結果こんな歌詞になりました。しかも脳内で聴こえたままのハモをつけたら全音でぶつかるトンデモコーラスに。みとせのりこ受信しすぎです。けれどそんなわたしの大暴れもきっちり内包してしまう弘田さんの楽曲とアレンジの深さに、この人やっぱり鬼才というか異能の人だなあと再認識したみとせでありました。(みとせ)

最初は静かな曲のイメージで作り始めたのですが、「眠り病」の起因などを想像して行くと、だんだんドラマチックなアレンジになって行き、ある意味、アルバムの核心、クライマックスとも言える曲に仕上がってしまいました。ガムランのイントロに始まり、耳鳴りのような正弦波の高音が重なる。この耳鳴り音は楽器音とぶつかってもおかまい無しに一曲を通して入っています。後半、みとせさんの声がアラベスクのような幾何学紋様のように折り重なり、変容して行く様が聴きどころかと思います。(弘田)

【ヨルガ文庫】ヨルガ読みきり小説【SS】

ヨルガ発売から1ヶ月と少しが経過し、皆様の中でもそろそろ「帝都」が馴染みのある街になって参りましたでしょうか。私どもの知らぬ路地、店、人がまだたくさんいるであろう帝都の、その風景を、リスナーの皆様と一緒に散策し、地図を作っていけたら幸いに思っております。

発売日に公開しましたWEBラヂオ「ヨルガ通信」もご好評を頂き、帝都通信社・ヨルガ制作班としては嬉しい限りでした。中でも朗読劇、ショートストーリー(SS)「或るをんなの話」に思いの他多くのご反響を頂きまして、あのような他愛ない風景でも皆様の中により帝都の空気やその感触を、身近に立体的に感じて頂けるのであればと非常に励みになりました。

そこでそのご好評を反映しまして、この度、帝都に纏わる伝聞をひとつ、短文として纏めさせて頂きました。

http://www.tts-products.co.jp/yorlga/info/?p=600

それが本日掲載の「翡翠の小鳥」です。朗読劇「或るをんなの話」でも出て参りました「ユメ買イ」にも纏わる物語となっております。拙い文章ではありますが、帝都の空気、ヨルガの世界をまたより身近に感じ、皆様が帝都を歩く愉しみの契機のひとつとなれば幸甚に存じます。

「ヨルガ文庫」第一回、どうぞお楽しみ下さい。