【楽曲解説】07_蘇州夜曲

みとせのりこの唱歌好き、大正昭和歌謡好きのせいも勿論ありますが、帝都という舞台に時代の空気を表すため1曲カヴァーをということで入れた曲。何曲か候補をあげた中から弘田さんが選んだ曲が「蘇州夜曲」でした。候補曲をアカペラで唄ったデモを送りつけて(笑)選んでもらったせいか、アレンジがついても出だしはアカペラに。アルバム中では帝都で人気の女優が吹き込んだレコォドがラジオから流れているような、そんなイメージで聴いて頂きたい曲です。(みとせ)

私にとってこの曲のアレンジはなぜか夏のイメージなのです。強い日差しによるコントラストの深い風景。暑さと気だるさ。でも建物や木の影は、ひんやりと涼しく、どこかの蓄音機から流れてくるこの曲に耳を傾けて「東洋のヴェニス」と呼ばれる水の都、蘇州の夜に思いを馳せるような。ちなみにカヴァー曲の候補「夜来香(イエライシャン)」とこの曲で迷ったのですが、アルバムの構成上スローでしっとりとしたものを入れたいなと思い、こちらを選びました。(弘田)

【楽曲解説】06_桜散ル夜~ハナチルヤ~

曲をもらって再生ボタンを押した瞬間、ヴァイオリンのかけあがりを聴いて「ベ〇ばら」始まった!と思った発想が貧困なわたくしです。西洋的な音色とクラシカルな半音メロディに、相反する和の要素を満載した歌詞がのって、まさしく和洋折衷文化華ヤカなりし大正のかほりも高い1曲になりました。恋は溺れてこその華、生命かけなば興醒めと申しますが、こういった曲も半端にやったらかえって興が醒めるというものです。思い切り大正浪漫の世界に浸って頂きたいと思います。(みとせ)

大正浪漫な曲をと考えつつも、それにエレクトリックなサウンドも混ぜるとどうなるのか。と、このようなアレンジに。作り始めた時はテンポがもっと遅かったのですが、だんだん上がって倍近いスピードの曲になりました。拍子も3拍子から6/8拍子に変わってしまいました。あと同時進行で某戦隊ものの曲も書いていた影響もあって、ヒロイックな和音進行になったかもしれません。それが却って功を奏し、華ヤカで刹那的な雰囲気が出たかな、と思います。(弘田)

【楽曲解説】05_Circulation

自分が唄ったとは思えないこのコーラスの物の怪振りたるやよし(笑)。弘田さんの楽曲は時折どんな形に仕上がるのか全く判らないまま、ただ言われるままに唄う曲、というのがありますが、まさしくこの曲がそれでした。仕上がりを聴いてあまりの変身ぶりとかっこよさに脱帽。まるで蝶の蛹からの変化のようでございました。(みとせ)

唄ものが小説だとすると、インストゥルメンタルの2曲は、その挿絵やイラストを描くような気分で作りました。「Circulation」とは、循環、血行というような意味合いです。帝都を循環する睡晶エネルギー。睡晶を工業利用するために、発電所や化学プラント、溶鉱炉などの施設が力強く稼働している、そんなシーンを想像しつつ、最初は20分くらいの曲を構想していたのですが、唄もので濃厚な曲がたくさん出来上がったので(笑)比較的短めにまとめました。(弘田)

【楽曲解説】04_異界の底に棲むモノは

こんな曲に化けるとは全く思っていませんでしたシリーズその1、通称#花魁。苦界に生きる遊女の悲しさつらさ儚さと、芯の強さをメモに託して渡したら、いきなり花魁ロックに大化けしてきて度肝を抜かれました。開き直って”三千世界の鴉を殺し~”などと吟じる「都都逸ロック」に仕立ててみました、高杉晋作様に感謝。弘田さんの「すごーく悪い女でお願いします」というディレクションにわたしなりに必死で応えてみたのですが、所詮はみとせのりこ、絞ったところでにくと色気はなかりけり。主様どうぞこのくらいで勘弁しなんして。(みとせ)

イントロや間奏部分に付けたコーラスパートに、みとせさんが「Padma(パドゥマ)」という言葉を当てて下さいました。インド、東南アジアの言葉で「蓮(はす)」の意味です。蓮は、泥沼に根を張り、緑の大きな葉を水面に浮かべて、夜明けとともに「ポンッ」と音をたてて、とても美しい大輪の花を咲かせます。泥沼にしか咲かない美しい花。花街に生きる女を歌うこの曲に非常に合うなぁと思っています。サウンドは轟音ロックで、レコーディング時、あまりの激しい演奏にベースのピックが削れすぎて一枚潰れてしまうほどでした。ライブで盛り上がりたい一曲です。(弘田)

【楽曲解説】03_夢ヲ買イマス

実はわたしがかつて絵で創作をしていた頃の持ちネタ、夢買イの骨董屋。怪し~い感じで唄おうと思っていたら、弘田さんに「むちゃくちゃウィスパーで、ものすごく少女っぽく唄って!」とディレクションされて吃驚。でも唄ってみたらさらに吃驚するほど嵌っていて、弘田さんの慧眼に感じ入ったものでした。作中では夢買イの店にいる、西洋人形と見紛うような少女の、その雰囲気を託しています。人間なのか人形なのかはたまた幻影、幽霊なのか。寝起きもかくや、血圧下50を切っていそうなみとせの低血圧ヴォーカルをご堪能下さい。(みとせ)

アルバム中でもひと際、ヨルガらしい曲かもしれませんね。みとせさんのイメージメモを拝読した瞬間、私の好きな幻想小説作家「夢野久作」の作品イメージと重なって、サウンドのアイデアも自然と浮かんできました。デモの時はキーが全音低くて、歌い方も大人っぽい方向でしたが、レコーディング当日に少女を連想させるウイスパーボイスに変えてもらいました。現場で伝えてすぐに対応できる、みとせさんの七色の演技力にも敬服。その少女とピッタリ寄り添って重なる低音ボイス(夢買イの主人の声ですね)は、BOSSのオクターバーとerectro-harmonixのVOICE BOXを使用。VOICE BOXのGENDER BENDER機能で、みとせさんの美声が男に変わっています。(弘田)

【楽曲解説】02_珠ノ舟

最後から2曲目に上がってきた曲で、弘田さんの習性なのか所謂POPS展開の曲(A-B-C-2A-2B-2C-間奏-B-Cみたいなやつ)がそれまでなかったというのに、この曲でまさかのPOPS展開!こういう雰囲気の曲は短い歌詞で語らせることが多いのに、どこまでも天邪鬼なお方です。どうしたものかと思いながらもらった曲を聴いていたら、突然「数え歌にせよ」という神のお声が。その神託のままに歌詞はするすると紡ぎ上げられ、気づけばこんな業深い詞になっていました。水に流るる燈籠の夜の水面にきらめく様を、泉鏡花の描くような美しくも儚く、そして残酷な光景を思い浮かべつつ聴いて頂きたいです。(みとせ)

わずか2時間ほどで出来上がった曲。作曲家としては時間をかけて練り上げた作品の方が良いものと思いたいものですが、えてしてあっという間に出来た曲の方が、評判が良かったりします。ギターは最初からガット弦のイメージを持っていました。ガットギターやバイオリンなどの収録が終わった後に、エンディングの盛り上がりを編曲したので、レコーディング参加者は「こんな終わり方だったのか」と驚いているかもしれません。心の中に溜まっていた感情が解放され、気持ちが浄化されるようなカタルシスのある終わり方にしたいと思っていました。聴き終えた時に、幻想的な短編小説をひとつ読み終えたような感覚になってもらえますように。(弘田)

【楽曲解説】01_セカイは僕の睛の中の映画

帝都を毎日自分の足で駆け巡っている「ポストマンの少年」の視点で書いた詞です。弘田さんの楽曲が帝都の街や風景そのものを描いていたので、わたしはその上を駆け抜ける、風景を語るのに相応しい人物を描きました。唄声にもいつものみとせの声よりやや太めでソリッドな響きを持たせ、勝手につけちゃったコーラスには逆にキラキラした風や光の色を持たせています。硬質な革の靴底が石畳を叩く音、少年の木綿のシャツや髪をすり抜けていく瑞々しい風、そしてその睛に映る帝都の風景のきらめきと躍動を、この曲に感じて下さい。(みとせ)

都会の持つエネルギーと躍動感、雑多さ、多様性、華やかさと寂寥感。ヨルガのいわゆるワールドマップとなる「帝都」そのものを俯瞰して描いた楽曲です。ドラムは、よく一緒にセッションしているドラマーのフレーズをスタジオでサンプリングしたものと、TOONTRACKのSUPERIOR DRUMMER2.0とのハイブリッドです。パーカッションは、躍動的なアフリカのリズムパターンをインダストリアルなメタルパーカッションに置き換えて収録。壷井さんのフィドルとワタさんのギター、マンドリンも楽曲の大事なエレメンツになっています。この曲では私はフレットレスベースやピアノを弾いています。(弘田)